アクアポニックス農場に多く利用されるDWCとNFT

農業としてアクアポニックスを利用する場合には、設備のコストパフォーマンスや作業性、運用のしやすさなどが大切です。アクアポニックスでは一般的にDWC(潅液水耕)とNFT(薄膜水耕)が選択されることが多いですが、今回はその特徴とメリット、デメリットを解説していきます。

目次

アクアポニックス農場に多く利用されるDWCとNFT

DWC(Deep Water Culture)とは

Deep water cultureは商業的な農場で最もよく利用されている栽培方法です。

DWCは水を張った栽培槽に発泡スチロールなどのイカダを浮かべて、そこに野菜を植えて育てます。

メディアベッド方式と違い、DWCの栽培槽には魚のフンを分解し、栄養に変換するろ過機能が無いため、水槽と栽培槽の間に物理フィルターと生物フィルターを設置します。

水の循環は高低差を利用します。この図の場合、魚の水槽から順に物理フィルター、生物フィルタ―、栽培槽へと水が流れ、栽培槽から水槽へポンプを利用して水を送ります。

DWC栽培槽の構造

DWCの栽培槽はこの図のような構造になっています。

DWCでは20〜30cm程の深さの栽培槽に防水シートなどを用いて水を張り、イカダを浮かべて野菜を植えます。この野菜を植えるイカダはラフトと呼びます。ラフトは直接水に浮かべて使用するため、素材には発泡スチロールを利用することが一般的です。

栽培槽の中にはエアレーションの設備を設置します。小規模な設備ではあまり問題になりませんが、規模が大きくなると養液の溶存酸素濃度が低下し、植物の育成に影響を与えてしまうためです。

この写真は実際のDWCです。

写真から分かるようにDWCでは一つの栽培槽で多くの野菜を栽培できます。この写真は商業農場であるため、葉物の野菜しか育てていませんが、DWCではトマトやナスなどの実をつける野菜も育てることが可能です。

NFT(Nutrient Film Technique)とは

続いて、NFT(Nutrient Film Technique)ついて解説します。

NFTも商業的な農場でよく利用されている栽培方法です。

NFTの栽培方法はわずかに勾配をつけた栽培槽の上方から、養液を流し、そこに野菜を植えます。設備の構成はNFTもDWCと栽培槽以外は同じような構成です。

NFTの栽培槽にも、ろ過機能がないため、物理フィルターと生物フィルターを設置が必要です。

NFT栽培槽の構造

NFTの栽培槽はこの図のようになっています。

僅かに勾配をつけたパイプなどの容器の中に薄く養液を流し、その中に野菜を植えます。養液を薄く流すことで、野菜の根が空気に直接触れるため、根への酸素供給が充分に行われるようになります。

DWCでは根への酸素供給をエアレーションで行っていましたが、NFTではその必要がないことが特徴です。

これは実際のNFTを利用した農場の写真です。

ここではNFT用の栽培槽を利用していますが、DIYする場合にはホームセンターなどで販売している塩ビパイプで代替も可能です。また筒状の栽培槽である必要もなく、同じような構造を作ることができればDWCのように幅の広い栽培槽でもNFTで栽培できます。

DWCとNFTのメリット・デメリット

DWCのメリット

  • 水質が安定しやすい

DWCでは魚の水槽に加えて、栽培槽が多くの水を蓄えます。
栽培設備全体の水量が大きくなるため水質の変化がしにくく、安定しやすいです。

  • 根が充分に成長できるスペースがある

DWCの栽培槽は20~30cm程の水深があるため、根を大きく伸ばす植物の栽培も可能です。長期間栽培する作物にも向いています。
また商業農場では基本的に葉物野菜を栽培しますが、トマトやナスなどの実をつける野菜もDWCでは栽培が可能です。

  • ポンプの故障に強い

アクアポニックスが稼働するために水を循環させるポンプとエアレーションは必要不可欠ですが、ポンプは壊れやすいです。しかしDWCはたとえポンプが壊れて水の循環が止まっても、栽培槽に水を蓄えておくことができるため、野菜が枯れる心配はありません。

DWCのデメリット

  • 温度管理にエネルギーが多く必要

DWCの場合、魚の水槽だけでなく、栽培槽にも大量の水を使用するため、水温を維持するためには多くのエネルギーが必要になることがあります。

  • 栽培槽にもエアレーションが必要

魚の水槽だけでなく、栽培槽にもエアレーションが必要になります。そのため、規模が大きくなるほど大容量のブロアーが必要になり、必要なエネルギーが大きくなります。

  • エサの投入量が多くなる

水を大量に使用することから、一定の水質を得るためにはNFTと比べると多くの餌が必要です。

  • 流出すると大量に水を失う

DWCの栽培槽の水量は大規模な設備では魚の水槽よりも大きくなり、もし水漏れなどがあると多くの水が流れ出すことになります。

NFTのメリット

  • 水の使用量が少ない

NFTはメディアベッドやDWCに比べ、栽培槽に流す水の量が少ないことから、栽培設備の全体の水量が少なくなります。

  • 軽量で高設化しやすい

NFTの栽培槽はメディアも使わず、水量も少ないため軽量です。そのため作業しやすい高さに栽培槽を構築しやすいです。

  • パイプなどでDIYしやすい

先に説明しましたが、NFTの栽培槽にホームセンターなどで販売されている塩ビパイプが使用できます。
また、水道用の塩ビパイプは水漏れもしにくく、安価であるためDIYに向いています。ご自身で作りやすいのもNFTの特徴です。

  • エネルギーの消費量が少ない

水の使用量が少なくなるため、水温維持に必要なエネルギーが小さくなります。

NFTのデメリット

  • 水の循環が止まると野菜が枯れる

NFTは常に水が流れ続け、水を貯える仕組みではないため、ポンプの故障や配管のつまりで水の循環が止まると、特に夏場は野菜が枯れやすくなってしまいます。

  • 根が大きく育つ野菜は向かない

DWCと違い、NFTでは根が伸びるためのスペースがあまりありません。そのため、根を大きく伸ばす作物や栽培期間が長い作物は向いていません。

  • 屋外に設置するには向かない

栽培槽が軽量であるため強い風に弱く屋外の設置には向いていないことがあります。

まとめ

DWCとNFTは大規模なアクアポニックスに向いていますが、それぞれメリット・デメリットがあります。その特性をよく理解したうえで導入の検討が大切です。また、どちらか一方だけでなく、両方のシステムを組み合わせての利用も可能です。DWCとNFTを組み合わせることで敷地の有効利用にもつながりますので、ぜひ検討してみてください。

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